活躍する若手教員2 レーザーで原子を冷やす
赤松大輔准教授
Q1:赤松先生はナノ粒子や冷却原子と光の相互作用の研究を専門としていらっしゃいますが、
なぜナノ粒子や冷却原子を研究テーマに選んだのでしょうか。
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いきなり難しい質問です。自分自身、これを研究テーマに据えようと思って研究しているわけではなく、「おもしろそう」「かっこよさそう」「なんか楽しそう」「すごそう」という感覚で実験を始め、やってみたら「やっぱりおもしろい」、「あ、つまんなかった」という感じで研究テーマを選んできました。
その結果、現在は、光を使って運動を量子レベルで制御可能な「ナノ粒子」と「冷却原子」がとても面白いと思っています。
人間が量子の世界をコントロールできるってすごくないですか?
Q2:どのようにして、ナノ粒子や原子を冷却しているのですか。
また、どのような応用があるのでしょうか?
レーザーを使って冷却しています。レーザーを使って冷やすというと意外に思うかもしれません。
レーザーは前世紀に発明された偉大な発明品です。
単色性に優れ、その強度や周波数を自由に制御することが可能です。
単色性と周波数制御性を利用することで運動する原子のみに力を加えることで減速(冷却)することが可能です。
また、空中に浮遊するナノ粒子の運動もレーザーを使って観測可能です。
さらに、その観測結果に基づいて光により運動を制御することで冷却することが可能です。
ナノ粒子も原子もマイクロケルビンという温度までレーザーを使って温度を冷やすことが可能です。
とてつもない低温で、「すごい」と思いませんか。
ここまで冷却すると、通常の我々の世界の常識とは違った振る舞い原子やナノ粒子がするようになります。
「量子力学」と呼ばれる学問で記述される世界が、ひょっこり顔を出してきます。
たとえば、原子は波としての性質を示すようになり、光のように干渉したりします。
ナノ粒子のような比較的大きな物体が本当に「量子力学」に従うのかはまだ不明で、このような現象を私の実験室で観測出来たら素晴らしいと思います。
このようにナノ粒子も原子も光により運動を超精密に制御し、観測することが可能です。
これら二つが共存するシステムを構築し、それらの間の相互作用などを調べナノテクノロジーのさらなる発展に寄与できるよう研究を行っています。
Q3:赤松先生は横浜国大に赴任する前に産総研で研究をされていましたが、国立研究所と大学の研究の違いについて教えていただけますか。
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国立研究所では、光格子時計に関する研究を行っていました。
光格子時計は新たな秒の定義を実現する有力候補であり、各国が強力に研究を推し進めています。
産総研のような国立研究機関では、国家として遂行することが重要な研究テーマを博士号を持ったプロの研究者集団が中心となって行っています。
プロ意識の高さから安定してレベルの高い研究を遂行することができる一方、これまでの常識にとらわれない全く新しい発想の研究というのが少し生まれにくいのではと思っています。
一方、大学で研究を遂行する主役は、学生さんたちです。
プロの研究者には経験と知識で劣る一方、これまでの常識にとらわれない自由な発想が可能です。
人の出入りも多いため、研究のレベルにはむらがあるかもしれませんが、0から1を生み出す研究が多く生まれるのは大学だと思います。
大学では、是非そのような研究を学生さんたちと一緒にしたいと思っています。
Q4:先生の教育方針や学生に対する期待を教えてください。
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「夢中に勝る努力なし」という言葉があります。
学生の間に是非、夢中になるものを見つけてほしいと思います。
物理工学の教員として私ができることは、物理や研究テーマを楽しく説明して、面白いと思ってもらい夢中になってもらえるようにすることだと思っています。
また、学生さんたちには是非自由な発想を大事にしてほしいと思います。
そして、学生さん同士で(時には私も入れてほしいですが)大いに議論をし、仲間を増やし大きな仕事を成し遂げてほしいと思っています。
【注】所属、肩書き等はインタビュー当時のものです。(写真撮影:田邊悠斗)