活躍するOB/OG2 人工衛星や探査機の研究開発で宇宙に挑む
(国研)宇宙航空研究開発機構(JAXA) 河野 太郎
Q0:簡単に自己紹介をお願いします。
国立研究開発法人、宇宙航空研究開発機構(JAXA) 研究開発部門 第二研究ユニット所属の河野です。横浜国立大学大学院修士課程を2009年度に修了後、2010年度にJAXAに入社し、入社以来主に人工衛星や探査機の構造に関わる研究開発に関わっています。
Q1:現在の仕事や研究の内容について教えてください。
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主に科学衛星などの宇宙機の「構造」に関わる研究開発を行っています。 昨今の宇宙機の構造に求められる機能性能というのは非常に多岐にわたっており、例えば望遠鏡であれば宇宙における過酷な環境下でも一定の形状をμmからnmの精度で保ち続けられるような安定性を持つことが重要となりますが、これが月のような天体に着陸する探査機になってきますと接地の瞬間に転倒しにくいような形状であることが必要となってきたりします。 また、人工衛星や探査機は打ち上げ時にロケットの振動や高加速度環境にさらされますが、そうした過酷な環境においても機能喪失しないような耐性が求められます。加えて、宇宙機の総質量はロケットの最大打ち上げ質量の制約を満たすものでなければなりません。 こうした衛星や探査機が必要とする機能と各種制約をより高い水準で満たす最適な構造について、部品レベルから機体の全体構造まで、さまざまな観点で解析や試験を繰り返しながら検討を行っています。その他、ロケットの運用、というものを実感として知り上記の研究開発にフィードバックするため、宇宙科学研究所で年に1,2回打ち上げを実施している観測ロケットの打ち上げ運用などにも定期的に参加しています。
Q2:横国大で学んだことや経験したことは、いまの仕事に生かされていますか?
学生時代には物理を中心としたカリキュラムで履修しており、当時も横浜国大において宇宙機の構造を学ぶような機会があったわけではありません。 あまり直接的につながっている感じはないかもしれませんが、実際のところ大学で学んだこと、経験したことは今の仕事に大いに生かされています。 例えば構造解析に用いる計算手法、特に線形代数や微分方程式などの各種計算手法や試験結果のデータ処理にかかわるプログラミング技術、数値シミュレーション、力学などの知識は共通しており、そもそも大学時代の学びや経験がなければ現在の業務に取り組むことは到底不可能です。 また、研究室では主にレーザーを用いた物理実験を行っていましたが、望遠鏡をはじめとする高精度構造の形状を計測するうえではレーザー変位計や干渉計など光を用いた計測を行います。 その際、まさに実験室で実験装置の光学系を組み立てていた経験が大いに役立っています。 その他、衛星に搭載する各種観測装置を考えるにしても観測装置の原理について物理的な理解があることでその先の見通しを持つことができるなど、基礎から応用まで様々な場面で大学時代の学びや経験は非常に重要なものとなっています。
Q3:今後の目標や夢について教えてください。
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現在、宇宙ベンチャーなどが世界や日本で数多く立ち上がり、一見盛り上がりを見せている宇宙開発ですが、これは裏を返すと宇宙開発というものが保護された特別なものではなくなり、他の産業と同様に存続にもかかわる厳しい競争にさらされる時代になりつつあることを意味しています。 環境としては国でも民間でも生き残りをかけた厳しい時代となっていきますが、そうした中でも世界の最前線に立ち続け、その先の人類未踏の領域に到達するための技術について自分の手で研究開発を続けていければと考えています。
Q4:在校生やこれから横国大を目指す若い学生にアドバイスお願いします。
研究者、エンジニアなど理系業務をなんらか志すのであれば特に学部時代の各科目の内容は基本的にどの分野に行っても知っていて損することはないのではないかと思います。 当然、分野ごとにいくつかの科目について知らなくても支障はないこともあると思いますが、知識として持っていると思わぬところで応用の可能性が広がります。 どうしても卒業してから気が付くことも多いのですが、将来的に後悔することのないよう日々の授業は大事にされると良いのではないかと思います。 あわせて、授業以外の活動や卒業後の就職への支援等に対しても、大学には所属学生にしか使用できない様々な設備、制度、人脈があります。 素晴らしい経験となる学外活動も当然ありますが、当てが無ければまずは足元から、せっかくの横浜国立大学の学生という身分を極力使い倒すことを考えてみるのもおすすめです。 また、その際は少しだけ自分から動いてみると、ただ過ごしているだけでは気が付かなかった思わぬ制度や機会に巡り合えるかもしれません。
【注】所属、肩書き等はインタビュー当時のものです。